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50年の味もこの夏で食べ納め、天ぷらの老舗「天安」が8月閉店へ

懐かしい佇まいの丸和センター。下北沢のランドマークの一つとして長年にわたり親しまれてきましたが、補助54号線の敷設に伴い、「フタバヤ靴店」「ZOZO」「しもきた茶苑大山」「バーン・キラオ」とテナントが徐々に撤退を始めています。どのお店も下北沢の日常的な風景だったから、不思議な気持ち。

中でも私が気がかりだったのは、2階にある天ぷらの老舗「天安(てんやす)」。SNSアカウントもありませんし、表に張り紙も出ていません。でもここで続けるわけにもいかないだろうし、どうなるのかな……気になって気になって、ランチを兼ねて久々にお店を訪ねることにしました。

運良くその時間、お客さんは私だけ。「天丼でいい?」私が注文するより早くおかみさんが注文を決め、「お好きなだけ飲んでね!料理作ってる間、私お相手できないと思うから。あとテレビ」という言葉とともに麦茶とリモコンが卓に置かれます。何だろうこの安心感、まるで実家のよう。

調理する間もおかみさんの口は止まりません。埼玉・深谷の生まれであること、おかみさんのお母さまがここで料理人の方と店を開いて50年超になること、料理人の方が一身上の都合で退職した後、親子でその味を受け継いできたこと、お母さんは90過ぎてなおご健在であること、8月にはこのお店を閉じられること……。

「なかなか良い場所がなくてね。設備投資も要るし、物販と違って飲食店は全然違う場所に移るとお客さんが離れちゃうから」

そうこう話しているうちに出てきた、天安おなじみの天丼(800円)。揚げたてのきす、ピーマン、えび、なすに真っ黒いつゆがよくしみています。衣は薄めですが、揚げたてでサクッといい音がします。厚い衣をザクザク言わせて食べる天ぷらが人気の昨今ですが、昔ながらの天丼は衣でかさ増ししないんだなあ。食べている間にしっとりして、歯ざわりが変わっていくのも楽しいです。

つゆはごはんにもかけてあるので、最後までおいしくいただくことができました。

「この天丼も、もう食べられなくなっちゃうんですね」と言うと、「だから8月までがんばって通ってください」とおかみさん。さすが50年の老舗はちゃっかりしています(笑)。

ときどき無性に食べたくなるあの味。思い出して恋しくなった方はぜひ8月までに足を運んでくださいね。

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